多田美波展(MOT)

「すべてのつくられた『もの』はそれ丈の存在価値でなく、可視的な無限空間(静的でない)への媒体に他ならない」 

本展図録の論考「多田美波の進化 – 美術史的観点から」由本みどり より

多田美波は1963年にこう言ったそうだ。これに尽きると思う。

彼女はここでいう『もの』づくりを「可視的」すなわち光との関係において取り組んだ、抽象彫刻家とか、造形作家とか、工業デザイナーとか、そういう水準では語れない人であった。そして、どの作品からも感じられる、人工的かつ自然物のような完成度をもつ作品から、妥協を許さない本当に凄いものづくりの人であったことが分かる。

彼女の作品は初期の頃を除いて、おそらくほとんどがエンジニアや職人との共同制作だったと思われる。技術者たちはきっと初めに彼女の計画を聞いて言葉失い、腕組みして考え込み、解決策を見つけてニヤニヤし、そして完成した折には深い満足感を得ただろう。そしてもちろん彼女自身も産みの苦しみを味わいつつ、とても楽しい人生を過ごしたに違いない。

彼女のキャリアは高度経済成長期から成熟あるいは低成長時代に至る日本の時代推移と全くぴったり一致する。

題、制作年とも不詳。1950年代、社会の電化の象徴である変電所を題材に油彩画を描いていた頃の作品。

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Tada-Minami

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